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「『月の光』に誘われて」

Sop.:関 麻由美


 のっけから何ですが、私は「フランスもの」に対して、不当な偏見を持っています。これでも昔に比べれば随分ましになってきて、「好きなフランス音楽」というのもやっと出てきたのですが、まだまだ...。サティなんか、未だに好きになれない。実はドビュッシーすら、3・4年前までは苦手でした。

 そんな私が、最初から偏見も何も吹き飛ばして魅了されたフランス音楽が、かの有名な『月の光』(ドビュッシー)。初めてこの曲と出会ったのは、小学校高学年?か中学1or2年生?の音楽の授業の時でした。この頃の授業ではある曲を聴いて感想文を書かせる、という場合によっては音楽嫌いを大製造してしまいそうなことをしていたのですが、この時に私が書いたのはおおむね次の様なものでした。

 「湖のほとりに青年が一人座っている。やがて月明かりとともに少女が一人現れる。二人は踊り始める。ひとしきり踊った後、少女は去り、青年は元の様にひとり腰掛ける。...」

 先生は点を付けるのに困っただろうな、と思うのですが、嘘でも想像でもなくこの情景が見えたのだから不思議です。(それを10年以上たった今なお覚えている、というのがまた不思議ですね。)ドビュッシーは「ピアノの画家」と呼ばれているそうですが、そんなことも知らなかった思春期の私に、彼はその美しい絵を見せてくれました。

 にもかかわらず、「あの曲は別」と相変わらずフランス音楽にかたくなな態度をとっていた私の目から偏見のウロコを落とし、2枚目の美しい絵を見せてくれたのも彼でした。その絵は『小舟にて』。この曲と出会ったきっかけは省略しますが、題名を知る前にさざ波に揺られる小舟が、私には見えたのでした。

 それ以来、ことドビュッシーに関しては私の偏見は淡雪のごとく溶け去り、新たな音楽の泉を発見するに至ったのです。

 この体験から考えるに、「どーしても理解できない」ものでも何かのきっかけで好きになれるのかも知れない、だからあせる必要はないのかな、なんて思ったりします。何も音楽だけに限ったことではないでしょうが...。

 『月の光』に誘われて『小舟にて』フランス音楽発見の旅に出た私の道程はまだまだ遠い。どうぞ、道案内をよろしくお願いします。