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「これを聴くと思い出す」

Sop.:三宅 のり子


 「夏の思い出」で尾瀬の広~いのどかな風景。

 「フニクリフニクラ」でオニのしましまパンツ姿。

 青島先生の曲で、薬丸さんの髪からもうもうとあがる白い粉...

 音楽には、それを聴いた時に浮かんだイメージや、その場の空気等漠然としたものを、ふっと、いやありありと思い起こさせる変な力がある様に思われる。

 幼稚園の卒園の時に必ず習う曲で、「い~つの事だか思い出してごらん」というのがあったが、「あんなコトー こんなコトー」歌って下さる先生の顔をぽかんと見ながら、何とカタコトした曲なんだ、と考えてしまった。気になりだしたらもうおしまい。「うれしカッタコト おもしろカッタコト~」残りの歌詞なんてどこかにふっとんでしまい、私の頭の中には、どこかの田舎の川辺でカタコト回る水車のイメージがはりついてしまったのだ。

 今でもあの曲を聴くと、幼稚園の古びた教室に「カタコト」歌う先生、そしてあの時浮かんだ情景そのままの、のどかに回る水車がオーバーラップされて目の前にぼよ~んと浮かぶのである。

 しかし、音楽もあまりに何度も聴かされると、懐かしさを通りこして満腹状態をもたらす様になる。まるで、ゆでたまごダイエットで5つめのたまごを無理やり口に押しこんでいるかの様な気分がやってくる。(実際やった事はないけれども)

 必ず、ピアノの演奏会で弾かれるやかまし系の曲や、毎度おなじみ廃品回収のBGM-。「エリーゼのために」を聴くと、給食のシチューのにおいがして、胸やけがする様な気がしてくる。給食そのものは大好きだったのだが...これもおかしなものだ。

 ふっとウキウキ気分を運んでくれる曲もたくさんある。

 オッフェンバック「天国と地獄」を聴くと走らなきゃいけない気分になって、パン食い競争なんかしたくなったりして、キンモクセイの香りが漂ってくるとか。

 ユーロビートを聴くと体がムズムズ、目の前がチカチカ、たばこの香りが...いや、そこまでがしないが、こう考えると、「思いで」と「音」と「香り」はからまりあって、人に郷愁の念を起こさせるマジックの様だ。