「ラヴェルのボレロ」
私は幼い頃からずっと、そして今も「自分で何かをしよう。」とか「こういう事がしたい。」というやる気と意志が弱い人間です。その私が、生まれてはじめて自らの意志で曲名を知りたいと思った音楽、それがラヴェル作曲「ボレロ」でした。
魅惑的なメロディーと絶えず繰り返されるリズムが聞こえてくると、体中が熱くなってじっとしていられない感じになります。大げさに言えば、血が騒ぐというのでしょうか。聞こえるか聞こえないかの小太鼓のリズムで始まり、フルートのメロディーが次々とたくさんの楽器に渡されながら、じっくりと時間をかけて大きくなっていく。もう、これ以上はどうしようもないまでの盛り上がりとうねり。一瞬にしての幕切れ。
丁度、私がピアノを習い始める前後、3歳か4歳の頃です。当時、犬のマークのVictorのステレオからはよくクラッシックが流れていました。たまにFMで「ボレロ」が放送されると、「これ前にも聴いたことがあるよね。前にも教えてもらったけど、何ていう曲だったかなぁ。」「ラヴェルのボレロよ。」母が答えます。「あっ、そうだった。ラヴェルのボレロだ。」
しかし、「ラヴェルのボレロ」なのか「ボレロのラヴェル」なのか作曲者と曲名の区別はできていなかったと思います。だって、ちゃんと自分から言えるようになるまで何度も同じことを聞いては答えてもらっていましたから...。「何回きくの?」と叱られるのを恐れながら。
余談ですが、生演奏だと急ブレーキをかけたようなあの一瞬の幕切れの後の余韻、残響を味わう間がありません。すぐに拍手がきてしまうのです。みんな、終ったらすぐの拍手はやめてみましょう!