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「わたしの密かなたくらみ Happy Birthday To You」

Alto:馬殿 史子


 皆さんがもっている一番昔の記憶っていつごろですか。わたしの場合それは、歌に関係があります。3歳か4歳の誕生日だとおもうのですが、家族のみんながわたしの名前をいれてうたっています。「ハッピバースデーふみこちゃーん」...はあー。なんともまあ。純日本風な名前、全くこの洋風の歌には合わない。とそのころは気恥ずかしさも手伝ってか妙な違和感を感じながらきいていたことを覚えています。このフレーズが4回繰り返されるだけの至って簡単な歌。これは初めて聞いた歌(もちろん覚えているなかで)ですが、皆さんも一度はだれかに歌ってもらったことがあるでしょう。面と向かって言うのはちょっと恥ずかしいけど、歌のなかに”おめでとう!今日生まれたんだね、ここまで大きくなったんだね、この一年も素敵だといいね”そんな様々な気持ちが込められているんじゃないかなあと勝手に思ったりしています。

 さて、皆さんもご存じのとうりわたしの仕事は<看護婦さん>なわけなのですが、何の因果か現在わたしは産婦人科で働いています。ふだんは手術や治療の目的で入院している患者さんのお世話をする婦人科チームで働いていますが、時々はBaby室の係になることもあります。Baby室でのおもな仕事内容は、赤ちゃんの健康管理や全身状態の観察、授乳の手伝い、スキンケア(沐浴:赤ちゃんのお風呂)、出生直後の赤ちゃんのケア(お風呂:俗に言う“産湯”や観察e.t.c.)いろんな内容がもりだくさんなのです。Babyの数が多いときはそんな事も言ってられませんが、やはりかわいいのです。最後にあげた出生直後の赤ちゃんのケアですが、よくテレビで“感動の出産シーン”なんてのがありますが、実際に見てもあれはやはり感動します。一般に感動する人とあんなにつらそうでグロテスクなといやがる人と2通りあるようですが、だんぜんわたしは前者のほうです。母親と赤ちゃんの最初の共同作業。母親は生まれてくる子供のためにその体を準備しはじめます。子供はその準備された道を様々な工夫をこらして出て来ます。(なんか学校の教材ビデオみたい)考えられますか皆さん、周囲30センチはある赤ちゃんの頭や体が直径10センチの丸い出口から出てくるんです。あるタレントの奥さんが「お産って鼻からスイカを出すようなもの」と言ってたそうですがやっぱりそれくらいすごいんでしょうね。短時間で生まれることもあれば、実に2日・3日かかってやっと生まれるということもあります。時間に関係なくその頑張っている姿は心打たれます。わたしがおもわず涙してしまったのは、初めて見たお産。出て来た赤ちゃんの産声を聞いたときでした。“オギャー”でなく“オァー”と初めは聞こえました。聞いて行くうちにその声は吸う息ともまざって“かあさん、おかあさん”というふうにわたしには聞こえたのでした。その声に<やったよ、頑張ったよ>っていう気持ちが込められているような気がしてなりませんでした。

 あまりプロっぽくないかもしれませんがいまでもお産を見るとそう思います。だからこそ一度でいいのでやってみたいことがあるんです。赤ちゃんがお母さんに初めてだっこされたその瞬間に「Happy Birthday To You」を歌ってあげたいんです。これこそお誕生日おめでとうだし、1歳の誕生日になら歌ってもらえても生まれたその時に歌ってもらえる「Happy~」ってないと思うんです。(実際は恥ずかしいし、するべきことがたくさんあってそれどころじゃない)

でも一度でいいからやってみたいなあ

 いつも赤ちゃんがBaby室に入る前に通る廊下や詰所でその時働いているスタッフが赤ちゃんの顔をのぞき込みそれぞれに声をかけます。「おめでとう・どれ、顔をみせてごらん・やっとでてきたんやなあ・こっちはまぶしいなあ」そんななかでわたしは心の中で密かなたくらみを実行しています。~Happy Birthday To You~

 これを書いてみて、いろんなお産を見てやっぱり思います。西河ママさんや木全ママさんって本当にスゴイ!ヴラーヴァ♪

 皆さんも今度こんな機会があったらぜひやってみてください、出来そうにない人はそういえばこんなことを言ってた人がいたなあと思い出してください。わたしが心の中で小さな声で歌いましょう。
  ~♪Happy Birthday To You♪~